1歳のお誕生日を迎えても歩く様子が見られないと、児童館や保育園で同じくらいの月齢の子が歩いている姿を見て、思わず不安になってしまいますよね。
「うちの子だけ遅いのかな」「どこか悪いところがあるのかな」「いつになったら歩くのだろう」と、心配になって相談される親御さんは少なくありません。
じつは、歩き始める時期には大きな個人差があり、1歳で歩かないこと自体は決して珍しいことではありません。一方で、ごくまれに、早めの相談がすすめられるサインが隠れていることもあります。
この記事では、歩き始めの目安、歩かない主な理由、家庭でできる関わり方、そして受診を考えたいサインまでを、公的機関のデータをもとにわかりやすく解説します。読み終えるころには、落ち着いてお子さんの様子を見守るための目安がつかめるはずです。
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1歳で歩かないのは珍しくない|歩き始めの時期は大きく幅がある

1歳の時点でまだ歩かなくても、多くの場合は心配のいらない個人差の範囲です。
こども家庭庁の令和5年乳幼児身体発育調査では、ひとり歩きができる子どもは生後1年4〜5か月ごろまでに9割以上になると報告されています。1歳ちょうどの時期は、これから歩き出す子がまだたくさんいる段階なのです。
さらに、WHO(世界保健機関)の運動発達の調査では、ひとり歩きが始まる時期はおおよそ8〜18か月(8.2〜17.6か月)と幅広く、この範囲内であれば正常な発達のばらつきと考えられています。1歳5か月ごろに歩き始めても、範囲の中に入るということです。
同じ月齢でも、早い子と遅い子で半年近く差があるのは自然なこと。まずは「焦らなくて大丈夫」と知っておいてくださいね。
歩き始めるまでの発達の順番
歩行は、ある日突然できるものではありません。多くのお子さんは、次のような順番で少しずつ体の使い方を覚えていきます。月齢はあくまで目安で、前後するのが普通です。
| 発達のステップ | 目安の月齢 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| すわる(ひとりすわり) | 7〜8か月ごろ | 手を使わずに座っていられる |
| はいはい | 8〜10か月ごろ | 移動する力と全身の筋肉が育つ |
| つかまり立ち | 9〜11か月ごろ | 家具などにつかまって立つ |
| つたい歩き | 11か月ごろ〜 | つかまりながら横に進む |
| ひとり歩き | 1歳〜1歳半ごろ | 支えなしで数歩進む |
つかまり立ちやつたい歩きができていれば、歩くための力は着実に育っています。あとは「ひとりで踏み出す勇気」を待つ段階といえるでしょう。
1歳で歩かない主な理由|多くは心配のいらない個人差
歩き始めが遅めになる背景には、いくつかのよくある理由があります。その多くは、病気ではなく個人差によるものです。
| きっかけ・理由 | どんな様子か | 心配度の目安 |
|---|---|---|
| 生まれ持った性格 | 慎重で、転ぶのをこわがる | 様子を見て大丈夫なことが多い |
| はいはいが充実 | 高速で動き回り満足している | 様子を見て大丈夫なことが多い |
| 体格・生まれた時期 | ぽっちゃりめ、早産で修正月齢が低い | 修正月齢で考える |
| 動く機会が少ない | 抱っこが多く床で過ごす時間が短い | 環境を整えると変化しやすい |
| 座ったまま移動する | はいはいをせずおしりで進む | 多くは正常。後述のサインを確認 |
こうして見ると、「歩かない」の背景にはお子さんなりの理由があることがわかります。周りの子と比べるより、その子自身の成長のペースに目を向けてあげたいですね。
はいはいの期間が長いのはむしろ心強い
はいはいをたっぷりする時期が長いと、「歩くのが遅いのでは」と気になるかもしれません。けれども、はいはいは腕や背中、体幹(たいかん)の筋肉をバランスよく育てる大切な動きです。
しっかりはいはいを経験した子は、転んだときに手が出やすく、歩き出してからの動きが安定しやすいともいわれています。焦って歩かせるより、今の動きをのびのび楽しませてあげましょう。
座ったまま移動する「シャフリングベビー(いざりっ子)」
はいはいをせず、座ったままおしりをずらして移動する子がいます。こうした赤ちゃんは「シャフリングベビー」や「いざりっ子」と呼ばれます。
大阪小児科医会によると、シャフリングベビーはうつぶせを嫌い、抱き上げても足を床につけたがらない傾向があり、歩き始めるのは1歳6か月から2歳ごろと遅めになることが多いとされています。
大切なのは、その多くは知的な発達に問題がなく、歩き始めればほかの子に追いついていくと考えられている点です。過度に心配せず見守って構いませんが、首のすわりが不安定、表情や言葉の発達が乏しい、手指の使い方が気になるといった様子が重なる場合は、一度小児科に相談すると安心です。
家庭でできる歩行に向けた関わり方|「練習」より「自由に動ける環境」

歩行は特別なトレーニングで早めるものではなく、お子さんが自分から動きたくなる環境づくりが大きな後押しになります。ご家庭では、次のような関わりを意識してみてください。
- 床で自由に動ける広めのスペースを用意する
- 少し離れた場所からおもちゃや名前で呼びかけて興味を引く
- すべりにくい環境で、はだしで過ごす時間をつくる
- できたときは笑顔でたくさんほめる
無理のない範囲で「動くって楽しい」と感じられる声かけを重ねることが、次の一歩につながっていきます。
かえって逆効果になりやすい関わり方
よかれと思ってした関わりが、お子さんの負担になってしまうこともあります。次のような関わり方は避けたほうがよいと考えられています。
- 足を持って無理に歩かせる
- わきを支えて長い時間立たせ続ける
- 歩行器に頼って長時間過ごさせる
- ほかの子と比べて焦ったり急かしたりする
歩行器を使っても歩き始めが早くなるとは限らず、長時間の使用はすすめられていません。あくまで見守りを基本に、お子さんのペースを大切にしてあげてくださいね。
受診を考えたいサインと目安|1歳6か月がひとつの区切り
多くは個人差とはいえ、「どこかで相談したほうがよい目安」を知っておくと安心です。ひとつの区切りとなるのが1歳6か月です。
先ほどの調査でも、1歳半ごろにはほとんどの子がひとりで歩くようになります。
そのため、1歳6か月を過ぎてもひとりで歩かず、つかまり立ちやつたい歩きも見られない場合は、一度かかりつけの小児科に相談することをおすすめします。
また、歩行だけでなく、目線が合いにくい、指差しをしない、名前を呼んでも反応が薄い、意味のある言葉が出ないなど、ほかの発達で気になる点が重なるときも、健診や小児科で相談してみましょう。
歩くのが遅いこと単独で発達の遅れと決まるわけではありませんが、いくつかのサインが重なる場合は、専門家に見てもらうことで見通しが立ちやすくなります。

早めに相談したい体のサイン
次のような様子に気づいたときは、月齢にかかわらず早めに相談を検討してください。
| 気づきたいサイン | どんな様子か | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 脚の開きに左右差がある | おむつ替えで片脚が開きにくい | 早めに小児科・整形外科へ |
| 脚の付け根のしわが左右で違う | 太もものしわが非対称に見える | 早めに小児科・整形外科へ |
| つま先立ちや反り返りが強い | 足の裏を地面につけたがらない | 健診や小児科で相談 |
| できていた動きが減った | 座る・はうなどが不安定になった | できるだけ早く小児科へ |
これらはあくまで気づきのきっかけです。当てはまるからといって病気とは限りませんが、早めの相談が安心につながります。
発育性股関節形成不全など歩き方に関わる状態
歩き始めや歩き方に関係する状態のひとつに、発育性股関節形成不全(はついくせいこかんせつけいせいふぜん)があります。股関節がうまくかみ合わない状態で、日本小児整形外科学会は早期発見の大切さを呼びかけています。
女の子、家族に同じ状態の方がいる、逆子(骨盤位)だった場合などはなりやすいとされ、脚の開きが硬い(開排制限)、脚の付け根や太もものしわが左右で違う、向きぐせが強い、といったサインが手がかりになります。
生後半年ごろまでに見つかれば、装具による治療で改善が期待できることが多いとされています。乳児健診でも確認される項目ですので、気になるときは健診時に相談してみてください。
1歳6か月児健診で見てもらえること
1歳6か月児健康診査は、母子保健法にもとづいて市区町村が行う健診です。こども家庭庁も「上手に歩けるか」を確認項目のひとつに挙げており、運動の発達に加えて、言葉や心身の発達も幅広く見てもらえます。
「歩かないこと」が気になっているなら、この健診はよい相談の機会です。日ごろの様子をメモしておくと、限られた時間でも医師や保健師に伝えやすくなりますよ。
受診を迷うときや夜間・休日の相談先
「受診するほどではないかもしれないけれど心配」というときは、公的な電話相談も活用できます。判断に迷ったら、小児救急でんわ相談(#8000)で看護師などに相談する方法があります。
それでも不安が残るときや、日中の通院がむずかしいときは、自宅から医師に相談できる小児科オンライン診療という選択肢もあります。
お子さんの動きの様子を見てもらいながら、受診の必要性や見守り方についてアドバイスを受けられます。
夜間や休日など病院に行く時間がないときは、小児科オンライン診療「あんよ」を活用して相談するのも選択肢の一つですよ。なお、医師の判断により対面での受診をおすすめする場合や、処方ができない場合があります。
1歳で歩かないことに関するよくある質問(Q&A)
- 1歳2か月ですが、まだ歩きません。大丈夫でしょうか?
-
1歳2か月で歩いていなくても、心配のいらないことがほとんどです。つかまり立ちやつたい歩きが見られていれば、歩くための力は育っています。多くの子は1歳半ごろまでに歩き出すため、それまではあたたかく見守って構いません。
- はいはいをせずに歩こうとしません。問題はありますか?
-
はいはいの期間や量には個人差があり、あまりしないまま立って歩く子もいます。座ったまま移動するシャフリングベビーの場合は歩き始めが遅めになることがありますが、多くはその後順調に発達すると考えられています。ほかの発達で気になる点が重なるときは、小児科に相談してみましょう。
- 歩行器を使うと歩くのが早くなりますか?
-
歩行器を使っても、歩き始めが早くなるとは限らないと考えられています。長時間の使用は避け、使う場合も段差や転倒に十分注意してください。歩く力は、床で自由に体を動かす経験から育っていきます。
- 何歳何か月まで歩かなければ受診したほうがよいですか?
-
ひとつの目安は1歳6か月です。1歳6か月を過ぎてもひとりで歩かず、つかまり立ちやつたい歩きも見られない場合は、かかりつけの小児科に相談してみてください。それより前でも、気になるサインがあれば早めの相談で構いません。
- つたい歩きはするのに、手を離して歩きません。いつごろ歩きますか?
-
つたい歩きができているなら、あと少しでひとり歩きに進むことが多いです。ひとりで踏み出すには「転んでも大丈夫」という気持ちの余裕も関係します。時期には幅がありますので、焦らず見守ってあげましょう。
- 歩くのが遅いと、発達の遅れや発達障害の可能性はありますか?
-
歩くのが遅いこと単独で、発達の遅れや発達障害と決まるわけではありません。ただし、目線や言葉、人への関心など、ほかの発達でも気になる点が重なる場合は、健診や小児科で相談すると見通しが立ちやすくなります。心配なときは一人で抱え込まず、専門家に相談してくださいね。
【まとめ】1歳で歩かなくても多くは大丈夫|目安を知って落ち着いて見守ろう
1歳で歩かなくても、その多くは心配のいらない個人差です。歩き始めの時期には大きな幅があり、1歳半ごろまでに多くの子が歩くようになります。
- ひとり歩きは1歳4〜5か月ごろまでに9割以上の子ができるようになる
- 歩き始める時期はおおよそ8〜18か月と幅があり個人差が大きい
- はいはいやシャフリングが長めでも多くはその後順調に育つ
- 無理に歩かせず、自由に動ける環境づくりを大切にする
- 1歳6か月を過ぎても歩かない、気になるサインがあるときは小児科や健診で相談する
お子さんのペースを信じつつ、気になるサインは見逃さない。その両方を意識できれば、必要以上に不安を抱え込まずにすみます。
夜間や休日など病院に行く時間がないときは、小児科オンライン診療「あんよ」を活用して相談するのも選択肢の一つですよ。
最終的な判断は医師にご相談ください。

