感覚過敏の子どもに見られる様子と家庭での工夫を解説

感覚過敏の子どもに見られる様子と家庭での工夫を解説

掃除機の音に耳をふさぐ、服のタグを嫌がって着替えが進まない。

そんな場面が続くと、心配になりますよね。「うちの子だけどうして」「わがままなのかな」と考え込んでしまう親御さんもいらっしゃいます。

この記事では、感覚過敏がどういう状態を指すのか、感覚の種類ごとに見られる様子と家庭でできる工夫、相談先の順番までを整理してお伝えします。

慌てずに、お子さんの困りごとから順に見ていってくださいね。

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目次

感覚過敏とは何か|診断名ではなく感覚の偏り

まず押さえておきたいのは、「感覚過敏」は病名でも診断名でもないということです。音や光、肌ざわりといった刺激を、まわりの人より強く感じ取ってしまう状態を指す言葉で、「感覚の偏り」「感覚特性」と呼ばれることもあります。

多くの人は、突然の物音や服の縫い目に一瞬だけ気づいても、しばらくすると気にならなくなっていきます。感覚の偏りがあるお子さんは、その刺激を外すことが難しく、ずっと気になり続けてしまうことがあります。

そのため、本人にとっては「気にしすぎ」ではなく、実際に疲れる出来事が一日中続いている状態に近くなります。園や学校のように刺激の多い場所ほど、消耗しやすくなります。

感覚鈍麻という反対の状態もある

感覚の偏りには、刺激を強く感じる側だけでなく、反応が薄い「感覚鈍麻(どんま)」と呼ばれる状態もあります。呼びかけても振り向かない、けがをしても痛がらない、といった様子です。

同じお子さんの中に、過敏な感覚と鈍い感覚が同時にあることもあります。「音には敏感なのに、痛みには鈍い」という組み合わせは珍しくありません。片方だけを見て判断しないほうがよいでしょう。

発達障害との関係をどう考えるか

自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如多動症)のあるお子さんに、感覚の偏りが見られることがあると報告されています。実際、感覚の偏りは自閉スペクトラム症の特性のひとつとして語られることが多いものです。

ただし、感覚の偏りがあるからといって発達障害があるとは限りません。逆に、発達障害のあるお子さん全員に感覚の偏りがあるわけでもありません。この記事の内容だけで自己判断せず、気になる様子が続くときは相談の場で確認してください。

子どもの発達や、こころ・行動の困りごとについては、日本小児神経学会の小児神経Q&Aで小児神経医による解説が公開されています。気になったときの読みものとして目を通してみるのもよいでしょう。

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感覚過敏の子どもに見られる様子と家庭での工夫

ここからは、感覚の種類ごとに「見られる様子」と「家庭での工夫」を整理します。すべてを試す必要はありません。お子さんが今いちばん困っている感覚から、ひとつずつ試してみてください。

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感覚の種類見られる様子家庭での工夫
聴覚掃除機や乾燥機の音で耳をふさぐ/サイレンや風船の破裂音を怖がる/ざわついた場所で疲れ切るイヤーマフを使える状態にしておく(耳栓は口に入れてしまったり耳の中に残ったりするおそれがあるため、乳幼児には使わない)/椅子の脚にカバーを付けて生活音を減らす/音の少ない部屋を一か所つくる
触覚服のタグや靴下の縫い目を嫌がる/歯みがき、爪切り、洗髪を強く拒む/砂遊びや粘土を避けるタグを外し、縫い目の少ない衣類を選ぶ/触る前に「今から触るね」と声をかける/本人の手でできるところは本人にまかせる
視覚蛍光灯のちらつきや直射日光をまぶしがる/白い紙を見続けられない/人混みで混乱する遮光カーテンや間接照明に変える/外出時に帽子やサングラスを持たせる/机の上に置くものを減らす
味覚・嗅覚混ざった味やにおいを強く嫌う/特定の食感を受けつけない/食事中にえずくことがある料理を皿ごとに分けて出す/食べられるものから食卓に並べる/苦手なにおいの場ではマスクを使う(窒息のおそれがあるため2歳未満には使わない)
体の動き(前庭覚・固有覚)ブランコや滑り台を嫌がる/乗り物酔いをしやすい/階段の上り下りを怖がる揺れは本人が自分で動かせる形から始める/急に抱き上げず予告する/混雑した乗り物の時間帯を避ける

共通して効くのは不安を減らすこと

感覚の種類にかかわらず、共通して大切なのは先の見通しを持てるようにすることです。不安が強いときほど、同じ刺激でもつらく感じやすくなると考えられます。

「あと3つ買ったら帰るよ」「歯みがきは上の歯だけね」と、終わりを先に伝えておくだけでも変わることがあります。絵や写真で示すと、言葉だけより伝わりやすいお子さんもいます。

逃げ場をひとつ用意しておく

家の中に、刺激から離れられる場所を決めておくのもおすすめです。段ボールで囲った一角や、押し入れの下段でも十分です。

「つらくなったらここに行っていい」と本人が知っていることに意味があります。実際に使う回数が少なくても、逃げ場があるという安心感が日々の消耗を減らしてくれます。

自分で選べる場面を増やす

服、食べ物、休憩するタイミング。小さなことでも本人が選べると、刺激への身構え方が変わります。

大人が良かれと思って先回りするより、「AとBのどっちにする」と二択にして渡すほうがうまくいく場面が多いものです。選んだ結果がうまくいかなくても、責めずに次の選択肢を一緒に考えてみてくださいね。

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感覚過敏の子どもへのよくある誤解とNG対応

感覚の偏りは外から見えないため、周囲に伝わりにくく、対応がすれ違いやすいところがあります。よくある対応と、代わりにできることを整理しました。

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よくある対応起こりやすいこと代わりにできること
無理に慣れさせようとする我慢の連続で消耗し、その場面自体を強く避けるようになることがある刺激の量を下げてから、本人が耐えられる範囲で少しずつ試す
わがままだと決めつける「自分はおかしい」と感じ、困りごとを言わなくなることがある「その音はしんどいね」と、感じ方をそのまま言葉にして返す
泣いたり嫌がったりしたときに叱る苦手な刺激に不安が上乗せされ、反応がより強く出ることがあるいったん刺激から離れ、落ち着いてから次の方法を相談する
栄養が偏るからと無理に食べさせる食事の時間そのものが苦手になり、食べられるものがさらに減ることがある食べられるものを中心に出し、食卓を楽しい場に保つ
家族だけで抱え込む対応が長期化し、親御さんが疲弊しやすくなる園や学校と様子を共有し、公的な相談窓口も使う

「治す」ではなく「困りごとを減らす」

感覚の偏りは、克服させるものではありません。目標は、感じ方そのものを変えることではなく、環境を調整して本人の困りごとを減らすことにあります。

成長とともに、自分に合った対処の仕方を身につけて楽になっていくお子さんもいます。一方で、思春期に一時的に強く出ることもあると言われています。長い付き合いになる前提で、そのときどきの環境を整えていくほうが現実的です。

園や学校には具体的な場面で伝える

先生に伝えるときは、「感覚過敏があります」よりも「掃除の時間の音が苦手で、耳をふさいでいます」と場面で伝えるほうが動いてもらいやすくなります。

運動会のピストルを笛に替える、教室の隅に静かな席をつくるなど、現場でできる工夫は意外とあります。困っている場面と、家庭でうまくいった方法をセットで共有してみてください。

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感覚過敏で相談したほうがよい目安と相談先

次のような様子が続くときは、一度相談してみるとよいでしょう。日常生活が回らなくなっているかどうかが、ひとつの見方になります。

  • 音や光で疲れ果ててしまい、園や学校から帰ると動けない日が続いている
  • 着られる服や食べられるものが極端に限られ、生活に支障が出ている
  • 登園や登校をしぶる、集団の場に入れない状態が続いている
  • 眠りが浅い、機嫌の落ち込みが強いなど、体や気持ちの不調が重なっている

相談先は身近なところから順に

相談先相談できる内容
かかりつけの小児科体の病気が隠れていないかの確認、今後どこへつなぐかの整理
自治体の保健センター発達や子育て全般の相談、地域の支援機関の紹介
児童発達支援センター発達支援の利用相談、園や学校での環境調整に関する助言

まずはかかりつけの小児科です。聞こえや見え方に体の要因がないか、ほかの不調が重なっていないかを確認できます。次に、地域の窓口である保健センター。乳幼児健診でおなじみの場所で、そのまま相談を続けられます。

より専門的な発達支援が必要になったときは、児童発達支援センターが窓口になります。

児童発達支援センターは、地域の障害児支援の中核を担う施設として児童福祉法第43条に位置づけられています。制度の全体像はこども家庭庁の障害児支援、施策ごとの内容は障害児支援施策にまとめられています。

地域にどの窓口があるかは、お住まいの市区町村の障害児支援担当課または保健センターにお問い合わせください。

オンライン診療でできることとできないこと

「病院に連れて行くこと自体が難しい」という場合、オンライン診療を入口にする方法もあります。人混みや待合室の刺激を避けられるのは利点です。

ただし、画面越しでは触診や検査ができません。耳や目の状態を詳しく調べる必要があるときは、対面での受診が必要になります。まず相談して方向性を整理する使い方が向いています。

親御さん自身が疲れてしまったとき

お子さんの反応に毎日向き合っていると、親御さんのほうが消耗してしまうことがあります。それは対応の失敗ではなく、負荷が続いていることの表れです。

自治体の子育て支援窓口や、保健センターの子育て相談は、親御さんの困りごとについても話を聞いてくれます。小児科はお子さんを診る場ですので、親御さん自身の心身の不調については、大人向けの医療機関や相談窓口を使ってくださいね。

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感覚過敏の子どもについてよくある質問【FAQ】

感覚過敏は治りますか?

「治す」という考え方はなじみません。感じ方そのものを変えるのではなく、環境を整えて困りごとを減らしていくことが目標になります。成長とともに、自分に合った対処の仕方を身につけて楽になっていくお子さんもいます。

わがままとの違いはどこで見分けますか?

場面によって出たり出なかったりするかが、ひとつの手がかりになります。感覚の偏りによるつらさは、好きな遊びの最中でも、機嫌のよい日でも同じように出やすいものです。判断に迷うときは、家庭で見分けようとせず記録して相談に持っていくほうが確実です。

何歳ごろから気づけますか?

着替えや食事、入浴といった毎日の場面で気づかれることが多く、乳幼児期から様子が見られることもあります。ただし、言葉で説明できる年齢になってはじめて分かる場合もあります。年齢だけで区切らず、困っている場面があるかで見てください。

HSC(ひといちばい敏感な子)とは違うのですか?

HSCは気質を説明するための概念で、医学的な診断名ではありません。似た様子に見えることがありますが、名前を当てはめることより、実際に困っている場面に手当てをするほうが役に立ちます。

きょうだいや祖父母に理解してもらえません。

「敏感だから」と特性の説明から入るより、「この音のときにこうなるから、こうしてほしい」と場面と具体的な依頼で伝えるほうが伝わりやすくなります。うまくいった方法を共有していくと、少しずつ協力が得られていきます。

イヤーマフや耳栓を使うと、逆に慣れなくなりませんか?

道具で刺激を減らすことは、逃げではなく環境調整のひとつと考えられています。守られている感覚があるほうが、結果としてその場に居られる時間が延びることもあります。ただし耳栓は口に入れてしまったり耳の中に残ったりするおそれがあるため、乳幼児にはイヤーマフを選んでください。使い方に迷うときは相談の場で聞いてみてください。

病院では何をしますか?

まず、体の要因がないかを確認します。そのうえで、困っている場面を整理し、家庭や園でできる工夫、必要なら専門機関への紹介を検討します。検査で白黒つける類のものではありません。発達の心配で専門機関を探すときは、日本小児神経学会の小児神経専門医のいる施設から地域の施設を調べられます。

【まとめ】感覚過敏の子どもには環境調整で困りごとを減らしていく

感覚過敏は診断名ではなく、感覚の感じ方の偏りです。感覚の種類ごとに見られる様子を知り、家庭でできる工夫を一つずつ試しながら、困りごとを減らしていくことが目標になります。

この記事のまとめ
  • 感覚過敏は診断名ではなく、感覚の感じ方の偏りを指す言葉である
  • 感覚の偏りがあっても発達障害があるとは限らず、自己判断はしない
  • 聴覚・触覚・視覚・味覚嗅覚・体の動きごとに、困っている感覚から工夫を試す
  • 無理に慣れさせる、わがままと決めつける、叱るという対応は避ける
  • 相談はかかりつけの小児科、自治体の保健センター、児童発達支援センターの順で検討する

夜間や休日など病院に行く時間がないときは、小児科オンライン診療「あんよ」を活用して相談するのも選択肢の一つですよ。

最終的な判断は医師に相談してください。