HSCの子どもとは|特徴・発達障害との違い・家庭での接し方を解説

HSCの子どもとは|特徴・発達障害との違い・家庭での接し方を解説

大きな音をとても怖がる、初めての場所では固まってしまう、友だちが叱られただけで涙ぐむ。

お子さんのそんな様子に、戸惑ったことはありませんか。「うちの子は神経質すぎるのかな?」「何か病気なのかもしれない」と、心配がふくらんでしまいますよね。

この記事では、HSCと呼ばれる考え方の中身、発達障害との違いの捉え方、家庭でできる関わり方の工夫を整理して解説します。

慌てて何かを直そうとせず、まずはお子さんの感じ方を知るところから始めてみてくださいね。

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目次

HSCとは|人一倍敏感とされる子どもの気質を表す言葉

HSCは「Highly Sensitive Child(ハイリー・センシティブ・チャイルド)」の頭文字をとった言葉です。アメリカの心理学者であるエレイン・アーロン氏が1990年代に提唱した概念で、まわりの刺激や人の感情を人一倍敏感に察知する気質をもつ子どもを指しています。

大人に対して使われる「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」と考え方の土台は同じで、その子ども版がHSCにあたります。日本でも書籍やインターネットを通じて広まり、「うちの子はこれかもしれない」と感じる親御さんが増えている言葉です。

HSCとHSPの違いは対象となる年代です

HSCとHSPは、指している性質そのものはほとんど変わりません。違いは対象で、HSCが子どもを、HSPが大人を指して使われます。

どちらも同じ提唱者による同じ枠組みから生まれた言葉なので、「子どもの頃はHSC、成長するとHSP」と表現されることもあります。

ただし、大人と子どもでは置かれている環境がまったく違います。大人はある程度、自分で環境を選んだり刺激から距離を取ったりできますが、子どもは園や学校、家庭という与えられた場で過ごすほかありません。

同じ敏感さでも、子どものほうが逃げ場をつくりにくいという前提は押さえておきたいところです。

HSCは医学的な診断名ではありません

最初に押さえておきたい、いちばん大切な点です。

HSCは心理学の分野で提唱された概念であり、精神疾患の国際的な診断基準であるDSM-5-TR(アメリカ精神医学会)やICD-11(世界保健機関)に、疾患として収載されているものではありません。

医療機関を受診して「HSCです」という診断が下りる仕組みは、日本には存在しないのです。

ですからHSCという言葉は、病名としてではなく、わが子の感じ方を理解するための見取り図として使うのが現実的だといえます。

病名のように扱ってしまうと、本来必要な相談や支援にたどり着くのが遅れることがあります。子どものこころや発達についての相談は、かかりつけの小児科をはじめ、子どもを診る医療者が入り口になります。

なお、「5人に1人」という割合が紹介されることがありますが、これは提唱者であるエレイン・アーロン氏が自身の著作で示した推計値で、対象・人数・時期が公表された統計に基づく数値ではありません。

国内で該当する子どもの割合を調べた公的調査も公表されていないため、この数字は目安として読んでください。数の多い少ないよりも、目の前のお子さんが何に困っているかのほうが、日々の対応にはずっと役立ちます。

敏感さは「治す」対象ではなく気質として捉えます

HSCが指しているのは気質、つまり生まれもった感じ方の傾向です。身長や声質と同じように、その子のもち味の一部だと考えられています。ですから「克服させる」「鍛えて直す」という発想は、この言葉にはなじみません。

一方で、「繊細な子には特別な才能がある」「HSCは天才肌だ」といった持ち上げ方にも根拠はありません。敏感さは長所にも短所にもなりうる性質であって、そのまま能力の高さを意味するものではないのです。

過度に持ち上げることも、欠点として扱うことも、どちらもお子さんの実像から離れてしまいます。

HSCの4つの特徴を一覧で確認する

提唱者は、HSCにあたる子どもに共通してみられる性質を4つに整理しています。

頭文字をとって「DOES(ダズ)」と呼ばれることもある考え方です。あくまで概念上の整理であり、当てはまる数で何かが決まるものではありません。

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特徴子どもに見られやすい様子受け止め方のヒント
深く考えてから動く初めての遊具をじっと観察してから触る/質問が細かい慎重さであって、消極的なのではないと捉える
刺激を受け取りやすい人混みや大きな音、衣類のチクチク感を強く嫌がる刺激の量そのものを減らす工夫が効きやすい
感情の反応が強く共感力が高い他の子が叱られている場面で泣く/ニュースを見て落ち込む感じ方を否定せず、いったん言葉にして返す
些細な変化によく気づく保育者の表情の変化や家具の位置替えにすぐ気づく予定や環境の変更は事前に伝えておく

この4つは、どれか1つだけが強く出ることもあれば、日によって現れ方が変わることもあります。表の内容は特性を理解するための整理であって、当てはまるかどうかを採点するためのものではないと考えてください。

見落とされやすいのが、敏感さと社交性は別の軸だという点です。人と関わるのが好きで活発なお子さんでも、刺激の受け取りやすさが強いことはあります。

「うちの子は人見知りしないからHSCではない」と早合点せず、その子が何にどれだけ疲れているかを見ていくほうが実際の助けになりますよ。

HSCと発達障害の違いをどう考えるか

「音を嫌がる」「集団が苦手」といった様子は、HSCの説明でも発達障害の説明でも出てくるため、混同されやすいところです。

ただし、この2つは言葉としての成り立ちがまったく異なります。

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観点HSCという捉え方発達障害
言葉の位置づけ心理学で提唱された概念で、診断名ではない医学的な診断基準に基づく診断名
判断する人判断する仕組みがない(理解の枠組み)医師が診察や検査、生育歴などから総合的に判断する
困りごとの捉え方刺激の受け取り方の強さとして説明される発達の特性と日常生活での困難の程度から評価される

ここで強調しておきたいのは、インターネット上のセルフチェックや、この記事の表を使って、発達障害であることを否定したり肯定したりはできないという点です。

「チェックに当てはまらなかったから発達障害ではない」という判断も、その逆も成り立ちません。診断は、実際にお子さんを診た医師が行います。

発達障害について、厚生労働省は、発達障害者支援法第2条にいう脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものと定義しています。

発達の特性については、小児神経を専門とする医師が所属する日本小児神経学会なども情報を公開しています。

気になる様子が続くときは、言葉の定義を調べ続けるよりも、かかりつけの小児科や地域の発達相談の窓口に一度つないでみるほうが、次の一歩が見えやすくなりますよ。

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HSCの気質がある子どもが困りやすい場面と家庭での工夫

敏感さそのものは問題ではありません。困りごとが生まれるのは、多くの場合「刺激の量」と「その子の受け取りやすさ」が釣り合っていない場面です。場面ごとに整理すると、打てる手が見つけやすくなります。

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場面起きやすいこと家庭でできる工夫
入園・進級など環境が変わるとき登園をしぶる/夜に泣く/食欲が落ちる数日前から見通しを言葉で伝え、持ち物を一緒に準備する
人混みや行事など刺激が多いとき途中で動けなくなる/終わったあとに崩れる滞在時間を短く区切り、静かな場所へ退避できるようにしておく
集団の中で注目されるとき発表の前に腹痛や頭痛を訴える事前に流れを共有し、練習の場を家庭で用意する
一日の終わり些細なことで大泣きする/寝つきが悪い帰宅後30分ほど何も求めない時間をつくる

一日の終わりに感情があふれるのは、園や学校で受け取った刺激を、そこまで抱えきっていた反動であることが少なくありません。

「家でだけ荒れる」という相談はよく聞かれますが、それは外で頑張れている裏返しでもあります。

叱って抑え込むよりも、切り替えの時間を確保するほうが結果的に落ち着きやすいと考えられます。

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HSCの子どもへの日常の関わり方で大切にしたいこと

家庭でできることは、特別な訓練ではありません。刺激の量を調整することと、感じ方を否定しないこと。この2つが軸になります。

まず試したいのが「予告」です。急な予定変更が苦手なお子さんは多いため、翌日の流れを前の晩に伝えておくと、当日の負担が軽くなることがあります。

効き方には個人差があるので、合わないときは無理に続けなくて構いません。行き先の写真を一緒に見ておくのも、見通しをつくる助けになります。

次に「逃げ場」の用意です。人が多い場所では、静かな廊下や車の中など、いつでも戻れる場所をあらかじめ決めておきます。「つらくなったらここに来ていい」と伝えてあること自体が、お子さんの安心につながります。

刺激そのものを減らす工夫も試す価値があります。衣類のタグを切る、蛍光灯の光がまぶしい席を避ける、家では音量を一段下げておく。

どれも小さな調整ですが、一日に受け取る刺激の総量が変わると、夕方以降の崩れ方が和らぐことがあります。

そして、感じ方を否定しない声かけです。「そんなことで泣かないの」と返す代わりに、「音が大きくてびっくりしたんだね」と、起きたことをそのまま言葉にして返してみてください。

気持ちに名前がつくと、子どもは自分の状態を扱いやすくなっていきます。

園や学校との共有も大切です。家庭で見えている様子を担任に伝えておくと、席の位置や行事での配慮につながることがあります。地域の子育て相談の窓口については、こども家庭庁が相談窓口の一覧を公開しています。

親御さんが一人で抱え込まず、相談先を早めに確保しておくことをおすすめします。

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医療機関への相談を考えたい子どもの様子

HSCという概念自体は治療の対象ではありませんが、敏感さの背景に別の要因が隠れていることもあります。次のような様子が続くときは、一度専門家に相談してみてください。

  • 腹痛や頭痛、吐き気などの身体の症状が2週間以上ほぼ毎日続いている(発熱や嘔吐をともなう、痛みが強くて眠れない、乳幼児で機嫌や飲みが悪いといった場合は、2週間を待たずに受診してください)
  • 食欲や睡眠が明らかに落ち、体重の増え方が止まっている
  • 登園や登校をしぶる状態が長引き、家庭での工夫では動かなくなっている
  • 以前できていたことが急にできなくなり、表情が乏しくなっている

こうした様子は、環境の負担が大きすぎるサインであることも、別の病気が背景にあることもあります。敏感な子だから仕方ない、と考えて止めずに、まずはかかりつけの小児科に様子を伝えるところから始めるのが安心です。

そのうえで、次の様子があるときは、様子を見ずにその日のうちに対面での相談につないでください。

  • 「死にたい」「消えたい」「いなくなりたい」といった言葉が出ている
  • 自分を強く責める言葉が続いている
  • 自分の体を傷つけた跡がある、傷つけようとしている

このようなときは、かかりつけの小児科や子どものこころを診る医療機関に直接連絡してください。

夜間・休日で判断に迷うときは小児救急電話相談(#8000)、お子さん本人や親御さんが話を聞いてほしいときは24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)を利用できます。

命に関わる危険が差し迫っていると感じるときは119番に連絡してください。これらの様子はオンライン診療では扱えないため、対面での受診を第一に考えてください。

小児救急電話相談の詳しい案内は日本小児科学会のページにあります。こどもと家庭の相談を受け付ける窓口の一覧はこども家庭庁が公開しています。

子どものこころを専門に診る国立成育医療研究センターこころの診療科のような専門の診療科は、かかりつけの医療機関や保健所などからの紹介状を持参した方のみ予約を受け付けている場合があります。

なお、こうした様子がない場合でも、オンライン診療では触診や血液検査、画像検査を行うことができません。家庭での様子を医師に伝えて方針を相談する場面では役立ちますが、診察の結果、対面での受診が必要と判断される場合があります。

HSCの子どもについてよくある質問【FAQ】

HSCは病気なのですか。

病気ではありません。心理学で提唱された概念であり、DSM-5-TRやICD-11といった診断基準に疾患として収載されているものではありません。生まれもった感じ方の傾向、つまり気質を説明するための言葉です。

HSCかどうかは検査でわかりますか。

診断名ではないため、確定させる検査はありません。インターネット上のチェック項目は理解の手がかりにはなりますが、結果で何かが決まるものではないと考えてください。

HSCと発達障害は家庭で見分けられますか。

見分けることはできません。似た様子として現れる場面があるため、家庭でのチェックだけで判断するのは避けてください。診断は、お子さんを実際に診た医師が、診察や生育歴などをふまえて行います。

敏感さは成長すると変わりますか。

気質そのものは大きくは変わらないと考えられていますが、経験を重ねる中で対処の仕方は育っていきます。苦手な場面を避け続けるのではなく、負担を減らしながら少しずつ慣れていける環境を整えることが助けになります。

親の育て方がHSCの原因なのでしょうか。

育て方が原因という考え方は取られていません。気質は生まれもった傾向として説明されるものです。親御さんが自分を責める必要はありませんよ。

きょうだいで様子がまったく違うのはなぜですか。

気質には個人差があるため、同じ家庭で育っていても刺激の受け取り方は異なります。同じ対応が片方には合い、もう片方には合わないことは珍しくありません。

【まとめ】HSCの子どもには診断名ではなく気質としての理解と環境の調整が助けになります

HSCは医学的な診断名ではなく、人一倍敏感とされる子どもの気質を説明するための概念です。

治す対象として扱うのではなく、刺激の量を調整しながら、その子の感じ方を理解していく姿勢が現実的な支えになります。

この記事のまとめ
  • HSCは心理学者エレイン・アーロン氏が提唱した概念で、DSM-5-TRやICD-11に収載された診断名ではない
  • 敏感さは気質であり、克服させる対象としても、才能の証としても扱わない
  • HSCと発達障害はセルフチェックで見分けられず、診断は実際に診察した医師が行う
  • 予告する・逃げ場を用意する・刺激そのものを減らす・感じ方を言葉にして返す、の4点が家庭での基本になる
  • 身体の症状や食欲、睡眠の変化が続くときは小児科に相談する(2週間はあくまで目安で、症状が強いときや乳幼児のときはもっと早く受診する)
  • 「消えたい」といった言葉や自傷が見られるときは、様子を見ずにその日のうちに対面で相談する

夜間や休日など病院に行く時間がないときは、小児科オンライン診療「あんよ」を活用して相談するのも選択肢の一つですよ。

最終的な判断は医師に相談してください。