朝なかなか起きられない、午前中に強いだるさや立ちくらみがあるといった症状は、怠けや気持ちの問題ではなく、起立性低血圧の場合があるようです。
本記事では、起立性低血圧の治し方として、症状のチェック方法や家庭でできる対策、受診の目安までを解説します。
起立性低血圧とは?定義とメカニズム

起立性低血圧とは、急に立ち上がったときや、立った姿勢が続いたときに血圧が下がり、脳への血流が一時的に足りなくなる状態を指すと言われています。
通常、私たちの体は姿勢が変わると自律神経が働いて血管を収縮させ、血圧を一定に保つ仕組みを持っています。
しかし、成長期の子どもはこの調節機能が未熟なため、立ち上がった瞬間に血圧の調整が追いつかず、立ちくらみやふらつきとして現れることがあるようです。
厚生労働省の調査によると、中高生は起立性調節障害に関連する症状の頻度が高い傾向にあることが報告されています。
起立性低血圧と起立性調節障害の違い
起立性低血圧と起立性調節障害は混同されやすいのですが、厳密には異なる概念です。
起立性調節障害(OD)は、自律神経の機能不全によって起こる症候群の総称です。
| 4 つのタイプ | 症状 |
|---|---|
| 起立直後性低血圧 | 立ち上がった直後に血圧が大きく低下する |
| 体位性頻脈症候群 | 血圧の低下は少ないものの心拍数が著しく増加する |
| 神経調節性失神 | 起立中に突然の血圧低下と意識消失が起こる |
| 遷延性起立性低血圧 | 起立後しばらくしてから血圧が低下する |
お子さんの症状がどのタイプに該当するかは、医療機関での検査によって判断されます。
タイプによって対応が異なる場合があるため、気になる症状がある場合は医師に相談することをおすすめします。
起立性低血圧の原因(子どもに多い理由)
起立性低血圧の主な原因として、以下のようなものが挙げられています。
自律神経の未熟さ
成長期の子どもは、体の発達に対して自律神経の調節機能が追いついていないことがあると言われています。
このため、姿勢の変化に対する血圧の調整がうまくいかないケースが見られるようです。
脱水・水分不足
体内の水分量が不足すると循環する血液量が減り、血圧が低下しやすくなります。
特に朝食を抜いたり、水分摂取が少ない子どもは症状が出やすい傾向があるようです。
生活リズムの乱れ
夜更かしや不規則な生活は自律神経のバランスを崩す要因の一つとされています。
スマートフォンやゲームの使用で就寝が遅くなるケースも少なくありません。
その他の要因
長時間の立位、暑い環境、食後の血圧低下なども引き金になる場合があります。
また、一部の薬剤が起立性低血圧を引き起こすこともあるため、服用中の薬がある場合は医師に伝えるとよいでしょう。
起立性低血圧の症状チェックリスト
以下の症状に複数当てはまる場合、起立性低血圧の可能性があると考えられています。
お子さんの日常の様子と照らし合わせてみてください。
- 立ち上がったときにめまいやふらつきがある
- 朝なかなか起きられず、午前中に体調が悪い
- 立っているときに気分が悪くなることがある
- 顔色が悪い、または顔色の変化を指摘されることがある
- 入浴時やお風呂上がりに気分が悪くなる
- 動悸や息切れを感じることがある
- 少し動いただけで疲れやすい
- 頭痛や腹痛を繰り返すことがある
- 乗り物酔いしやすい
- 午後や夕方になると体調が回復する傾向がある
上記は一般的な目安です。3つ以上当てはまる場合は、一度医療機関で相談されることをおすすめします。
検査・診断方法(病院で何をするか)
起立性低血圧が疑われる場合、医療機関では以下のような検査が行われることがあります。
新起立試験(シェロングテスト)
横になった状態と立ち上がった後の血圧・心拍数の変化を測定する検査です。
起立性調節障害の診断に広く用いられている方法の一つです。
問診・生活状況の確認
症状の経過や出やすい時間帯、睡眠・食事・運動などの生活習慣について詳しく確認されます。
受診前に症状が出た日時や状況をメモしておくと、スムーズに伝えられるでしょう。
血液検査など
貧血や甲状腺機能の異常など、他の原因が隠れていないかを確認するために、血液検査が行われることもあります。
検査自体は身体への負担が大きくないものが中心です。お子さが不安にならないよう、事前にどんな検査をするか伝えておくと安心です。
起立性低血圧への対策
生活習慣の改善(水分・運動・睡眠)

起立性低血圧の治し方として、まずは日々の生活習慣を見直すことが一般的に推奨されています。
水分をこまめに摂取する
血圧を一定に保つには、体内を循環する血液量が不足しないことが重要とされています。
起立性低血圧が疑われる子どもは、水分摂取が少ない日ほど症状が出やすい傾向があるようです。
一度に大量に飲むのではなく、授業の合間や帰宅後などこまめに水分を摂る習慣をつけると続けやすくなります。
目安として、1日あたり1.5〜2リットル程度の水分摂取が推奨されることがあります。
ただし、適切な量はお子さの体格や活動量によって異なるため、医師に確認するとよいでしょう。
適度な運動で筋力を維持する
午前中に体調が悪い子どもも、夕方から夜にかけては比較的元気になることが多いのが起立性低血圧の特徴です。
この調子が良い時間帯を利用して、軽いウォーキングなどの運動を取り入れてみるのはいかがでしょうか。
特にふくらはぎの筋肉は、血液を上に押し戻すポンプのような役割をしています。
無理をして激しい運動をする必要はありませんが、日常的に足を動かす習慣を持つことが、症状の緩和に役立つと考えられています。
睡眠環境を整える
規則正しい睡眠リズムを保つことも大切です。
就寝前のスマートフォンやゲームの使用を控え、決まった時間に布団に入る習慣を心がけるとよいでしょう。
食事・栄養面の工夫
食事面でも、起立性低血圧の症状を和らげるためにできることがあります。
塩分の適度な摂取
一般的に減塩が推奨されることが多いですが、起立性低血圧の場合は医師の判断のもと、塩分を少し多めに摂ることが勧められるケースもあります。
塩分には血液量を増やし、血圧を維持する働きがあるためです。
※塩分量の調整は必ず医師に相談の上で行ってください。高血圧など他の疾患がある場合は逆効果になることがあります。
バランスの取れた食事
鉄分やたんぱく質を含む食品を意識して取り入れることで、血液の質を保つことが期待できます。
朝食を抜かないことも重要なポイントです。
食後に血圧が低下する「食後低血圧」を防ぐため、一度に大量に食べるよりも、少量ずつ分けて食べることが有効な場合もあるようです。
薬物療法(使われる薬と注意点)
生活習慣の改善を行っても症状がなかなか良くならない場合、医師の判断により薬物療法が検討されることがあります。
起立性低血圧に対して用いられる薬には、血圧を上昇させる作用のある昇圧剤などがあります。
薬はあくまで生活習慣の改善と併用するものであり、薬だけで根本的な解決を目指すものではないと一般的に考えられています。
起立性低血圧は改善する?回復の目安
保護者の方にとって、「この症状はいつ治るのか」は最も気になるポイントではないでしょうか。
起立性低血圧は、成長とともに自律神経の調節機能が安定し、症状が軽くなっていくケースが多いと言われています。
思春期以降に改善する子どもも少なくありません。
ただし、回復までの期間には個人差があり、数か月で改善する場合もあれば、数年にわたって症状が続く場合もあるようです。
症状が学校生活に影響している場合は、早めに環境調整や相談を進めるほうが安心でしょう。
起き上がるときのコツ(急な立ち上がり防止)
寝ている・座っている状態からいきなり立ち上がると、自律神経の調整が追いつかず、ふらつきが起こりやすくなります。
以下のコツを意識してみてください。
段階的に体を起こす
朝の起床時などは、いきなり立つのではなく、いったん座って呼吸を整えることを意識するとよいでしょう。
足首を回したり、つま先を動かしたりといった軽いストレッチを行ってから立ち上がると、下半身にたまった血液が戻りやすくなることが期待できます。
枕を高くして寝る(ヘッドアップ・ティルト)
「Head-up tilt」と呼ばれる方法で、頭の位置を足よりも10〜30センチ程度高くして寝るスタイルです。
完全に水平な状態で寝るよりも、重力に対する血圧調整に体が慣れやすくなると言われています。
専用のベッドがなくても、クッションなどを活用して上半身に緩やかな傾斜をつけることで代用できます。
病院に相談する目安・受診科の選び方
生活の工夫を続けても改善の様子がなく、日常生活に支障が大きい場合は、医療機関の受診を検討してください。
受診を検討するタイミング
立ちくらみや朝の不調が2週間以上続く場合や、学校を休みがちになっている場合は、早めの受診が望ましいでしょう。
失神を経験した場合は、速やかに医療機関を受診してください。
何科を受診すればよいか
お子さの場合は、まずかかりつけの小児科に相談するのが一般的です。
必要に応じて、循環器内科や小児神経科を紹介されることもあります。
症状が出る時間帯、立ちくらみの頻度、学校で困る場面などを事前にメモしておくと、診察がスムーズになります。
保護者ができるサポート・声かけのコツ
起立性低血圧は、本人の意思や努力だけではコントロールしにくい体の問題です。
保護者の方の理解とサポートが、お子さの安心感につながります。
「怠けている」と決めつけない
朝起きられない姿を見ると、つい「怠けているのでは?」と思ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、本人が一番つらく感じていることが多いものです。体の仕組みの問題として受け止め、寄り添う姿勢が大切です。
学校との連携
午前は遅れて登校する形を検討したり、体育の授業見学を希望するなど、学校と相談しながら一人ひとりに合わせた対応を検討しましょう。
担任の先生やスクールカウンセラーに症状を共有しておくと、学校側の理解を得やすくなります。
小さな改善を一緒に喜ぶ
「今日は少し早く起きられたね」「水分をしっかり摂れていたね」など、日々の小さな変化に気づいて声をかけることで、お子さんのモチベーション維持につながります。
【Q&A】起立性低血圧に関する質問まとめ
起立性低血圧についてよくある質問をまとめました。
- 起立性低血圧は成長とともに落ち着く?
-
思春期以降に体の調整が安定し、症状が軽くなる子どももいます。一方で学校生活に影響が出る場合は、早めに環境調整や相談を進めるほうが安心です。
- 起立性低血圧を病院に相談する前に家庭で準備しておくと良いことは?
-
症状が出る時間帯、立ちくらみの頻度、学校で困る場面などをメモしておくと相談がスムーズになります。水分摂取量や睡眠の状況も、わかる範囲で整理しておくと役立ちます。
- 起立性低血圧への対応について学校に伝えることは?
-
本人が怠けているのではなく、体の調整の問題として説明することが重要だと考えられています。午前は遅れて登校する形を検討したり、体育の授業見学を希望するなど、一人ひとりに合わせた対応を検討しましょう。
- セルフチェックの方法はありますか?
-
本記事内のチェックリストを目安にしていただけます。
ただし、正確な診断には医師による検査が必要です。気になる症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします。
- 起き上がるときに気をつけることはありますか?
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いきなり立ち上がらず、まず座った状態で足首を動かしたり深呼吸をしてから、ゆっくり立ち上がるとよいでしょう。
急な姿勢変化を避けることがポイントです。
- 起立性低血圧のケア方法は?
-
こまめな水分摂取、適度な運動、規則正しい睡眠リズム、バランスの良い食事が基本的な対策・治し方として挙げられています。
医師の指示のもとで塩分摂取の調整や薬物療法が行われる場合もあります。
【まとめ】起立性低血圧の改善には水分摂取や生活習慣の見直しなど多角的なケアが大切
起立性低血圧は、朝の不調や立ちくらみといった症状が続くことで、子どもの学校生活や日常生活に影響を及ぼすことがあります。
怠けや気持ちの問題と誤解されやすい一方で、体の仕組みに関係する問題なので、周囲の正しい理解と無理のない対応が大切です。
- 起立性低血圧は朝に症状が重くなるケースが多い
- 日常生活や睡眠環境を整えることで症状の緩和が期待できる
- 生活の工夫でも改善が難しい場合は医療機関への相談を検討する
起立性低血圧の症状は個人差が大きいため、通院そのものが負担になる場合には、自宅から医師に相談できる小児科オンライン診療あんよの利用も一つの方法です。
時間帯を選んで相談できるため、通院の負担を軽減できる場合もあります。

