「朝、何度起こしても子どもが起きられない。これって、私の育て方が悪かったのかな…」
「学校に行けない日が続いていて、周りからは『甘やかしすぎ』と言われてしまう…」
そんなふうに、ご自分を責めてしまっている親御さんは少なくありません。
結論からお伝えすると、起立性調節障害は母親のせいではありません。
日本小児心身医学会のガイドラインでも、起立性調節障害は循環器系の自律神経の調節がうまくいかなくなる「身体の病気」と位置づけられています。
この記事では、起立性調節障害が母親のせいではない医学的な理由、本当の原因、そして家庭でできる具体的なサポート方法までを、公的機関のガイドラインに基づいてやさしく解説します。
「自分を責めてしまうつらさ」が少しでも軽くなり、お子さんと前向きに向き合うヒントになれば幸いです。
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本記事は一般的な医学情報の解説を目的としており、個別の診断・治療を指示するものではありません。最終的な判断は医師にご相談ください。
【結論】起立性調節障害は母親のせいではありません

日本小児心身医学会によると、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)は血圧や心拍数など循環器系の自律神経の調節に不調をきたす病気で、思春期に発症しやすいとされています。
つまり、起立性調節障害は「育て方」や「親の性格」が直接の原因で起こる病気ではなく、身体の調節機構の不調が本態です。
済生会の解説でも「体質によるところが大きい病気」と説明されており、母親の養育態度が原因であるという医学的な根拠はありません。
朝起きられない様子が「怠け」のように見え、誰かに原因を求めたくなってしまうこと、周囲からの心ない言葉に追い詰められること、真面目な親御さんほど「自分の責任」と背負い込んでしまうことなど、自分を責めてしまう状況には共通点があります。
しかし、医学的に確かなのは、起立性調節障害は身体の自律神経の不調による病気であり、母親が責任を一人で抱える必要はないということです。
起立性調節障害とは?中学生の約10%が経験する自律神経の不調
起立性調節障害は、決して特別な病気ではありません。
日本小児心身医学会によると、軽症例も含めて中学生の約10%にみられる、思春期に多い身体の病気です。
通常、人は立ち上がると重力で下半身に血液がたまります。
これを補うために交感神経が血管を収縮させ、心臓へ戻る血液量を増やして血圧を保つしくみが働きます。
起立性調節障害では、この自律神経による調節機能がうまく働かず、立ち上がった時に脳への血流が一時的に減ってしまうのです。
起立性調節障害の主な症状
同学会のガイドラインでは、次のような身体症状があるとされています。
- 立ちくらみ・めまいを起こしやすい
- 朝なかなか起きられない・午前中の調子が悪い
- 頭痛・倦怠感・食欲低下
- 立っていると気持ちが悪くなる・失神することがある
- 動悸や息切れがする
- 顔色が青白い
これらの症状は午前中に強く、午後にかけて軽減するのが特徴です。
また、雨の前など気圧の変化の影響も受けやすいとされています。
起立性調節障害の好発年齢と男女比
起立性調節障害は、思春期に体が急成長する時期に発症しやすい病気です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 好発年齢 | 10歳〜16歳ごろ |
| 有病率 | 小学生で約5%、中学生で約10% |
| 男女比 | 男児1に対して女児1.5〜2 |
| 不登校との併存 | 不登校の約3〜4割に起立性調節障害が併存 |
中学生の約10人に1人が経験する身近な病気ですが、症状が目に見えにくいため周囲に理解されにくいという特徴があります。
起立性調節障害の4つのサブタイプ
日本小児心身医学会の診断ガイドラインでは、新起立試験という検査の結果から、起立性調節障害は次の4つのサブタイプに分類されます。
| サブタイプ | 主な特徴 |
|---|---|
| 起立直後性低血圧(INOH) | 起立直後に強い血圧低下が起こり、回復に時間がかかる |
| 体位性頻脈症候群(POTS) | 起立後の血圧低下はなく、心拍数が異常に増加する |
| 血管迷走神経性失神(VVS) | 起立中に急激な血圧低下が起こり、失神することがある |
| 遷延性起立性低血圧(DeOH) | 起立中に徐々に血圧が下がっていき、症状が出る |
どのタイプかは医療機関の検査で判定するものなので、家庭で見分ける必要はありません。
「自律神経の調節がうまくいかない病気」とまず知ることが、正しい対応への第一歩です。
「母親のせい」と感じてしまう4つのきっかけと、その医学的な誤解
多くの母親が「自分のせいかも」と感じてしまうのには、共通する4つのきっかけがあります。

ただし、いずれも医学的には誤解です。
| きっかけ | よくある思い込み | 医学的な事実 |
|---|---|---|
| 朝起きられない様子 | 「私の起こし方が悪いのかも」 | 自律神経の調節がうまく働かないため、無理に起こしても起きられない |
| 周囲の心ない一言 | 「甘やかしすぎだ」と言われた | 養育態度が直接の原因と示す医学的根拠はない |
| 学校に行けない状態 | 「私が背中を押さないからでは」 | 無理な登校はかえって症状を悪化させる可能性がある |
| ネット上の不確かな情報 | 「親の対応次第で防げる」 | 学会ガイドラインに養育態度を原因とする記載はない |
「怠け」に見えてしまう症状の特徴
起立性調節障害は、朝の症状が強く午後に回復するため、周囲には「夜遊びで起きられない」「学校をサボっている」と映ってしまいがちです。
同学会では、家族の多くが症状を「精神的なもの」「気持ちの問題」と誤解しやすいことに警鐘を鳴らしています。
子どもが「怠けている」と叱責されることが、かえって自律神経のバランスを乱し、症状を悪化させる要因にもなります。
「育て方が悪かった」という思い込みの正体
「もっと厳しくしていれば」「もっと愛情を注げば」と過去をふり返ってしまう親御さんも多いでしょう。
しかし、起立性調節障害は思春期の身体の急激な成長やホルモンバランスの変化に、自律神経の発達が追いつかないことが背景にあります。
済生会の解説では「両親、特に母親の思春期前後に同様の症状があったケースが珍しくない」とされ、体質的な要素が大きいことが示されています。
これは「母親のせい」ではなく、誰のせいでもない生まれもった体質の傾向として理解するのが正確です。
起立性調節障害の本当の原因5つ|学会ガイドラインから読み解く
日本小児心身医学会のガイドラインでは、起立性調節障害の成因として5つの要素が挙げられています。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 自律神経の代償機構の破綻 | 起立に伴う血圧変動を調節するしくみがうまく働かない |
| 交感神経活動の偏り | 交感神経の働きが過剰または不足している |
| 水分の摂取不足 | 循環血液量が不足することで症状が出やすくなる |
| 心理社会的ストレス | 学校・家庭などのストレスが自律神経に影響を与える |
| 活動量の低下 | 動かない状態が続くと筋力低下と自律神経の機能低下が進む |
注目すべきは、これらすべてが「身体の調節機構」または「子ども自身が感じるストレス」に関する要因であり、「母親の養育態度」自体が原因として挙げられていないことです。
「ストレス」と「母親のせい」は別物
5つの原因のうち「心理社会的ストレス」には、学校生活・友人関係・学業の悩み・家庭環境の変化など、さまざまな要素が含まれます。
家庭の雰囲気もその一部ですが、それは家族みんなで作るものであり、母親一人の責任ではありません。
また、ストレスは「悪化要因」の一つであり、起立性調節障害そのものを生じさせる単独の原因ではないことも、ガイドライン上明確になっています。
思春期に発症しやすい身体的な背景
思春期は身体が急成長し、ホルモンバランスも大きく変動する時期です。
身体の成長スピードに自律神経の調節機能が追いつかないため、立ちくらみや朝の不調が出やすくなります。
これは病気というより成長期に起こりやすい一時的な変化でもあり、適切なケアを行えば多くは時間とともに改善していきます。
「親が甘やかすと起立性調節障害になる」は本当か|医学的根拠を確認
インターネット上には「親が優しすぎる」「甘やかしている」ことが起立性調節障害の原因だとする情報も見られます。
しかし、これらは医学的なガイドラインに基づく見解ではありません。
日本小児心身医学会のガイドラインにも、済生会の解説にも、養育態度を直接的な原因とする記述はありません。
「甘やかし原因論」の何が問題か
| 主張 | 医学的な実際 |
|---|---|
| 「甘やかしているから起こる」 | 養育態度を起立性調節障害の原因とする科学的根拠はない |
| 「厳しく育てれば防げる」 | 厳しさで自律神経の調節機能は改善しない |
| 「気合いで治る」 | 本人の意志や努力で症状をコントロールできる病気ではない |
| 「親が頑張れば治る」 | 治療には医療機関での診断と長期的な対応が必要 |
同学会では、起立性調節障害について「本人のやる気や気合いで乗り越えられる病気ではない」と明記されています。
ですので、「叱って厳しくする」「無理に学校へ行かせる」といった対応は、子どもに大きなストレスを与え、かえって症状を悪化させる可能性があります。
大切なのは「病気」として理解すること
医学的に確認されているのは、起立性調節障害は身体の病気であり、家族や学校関係者がそれを理解することが回復に役立つということです。
同ガイドラインでは「ODが身体の病気であることを親子に丁寧に説明することで、親子とも不安を軽減できる」と説明されており、家族の正しい理解こそが治療の出発点であるとされています。

起立性調節障害の母親としてできるサポート5つ
母親のせいではないとわかっても、「では、自分は何ができるのか」と気になりますよね。
日本小児心身医学会のガイドラインに基づき、家庭でできるサポートを5つに整理しました。
| サポート | 具体的な内容 |
|---|---|
| ①病気として理解する | 「怠け」ではなく自律神経の不調と受けとめる |
| ②叱責せず、寄り添う | 起きられない朝を責めない・午後の調子のいい時間を大切にする |
| ③水分・塩分の摂取をサポート | 1日1.5〜2リットルの水分、塩分は普段の食事+3g程度を目安にする |
| ④生活リズムの調整 | 早寝早起き・毎日30分程度の歩行を一緒に習慣化する |
| ⑤医療機関・学校と連携する | 主治医や学校と情報を共有し、無理のない登校スタイルを相談する |
①「病気として理解する」のがすべての出発点
同学会では、起立性調節障害の治療においてまず「疾病教育」、つまり病気の正しい理解を親子で深めることが推奨されています。
「学校に行きたくないから具合が悪くなる」のではなく、「具合が悪いから学校に行けない」のだと理解することで、お子さんへの言葉がけが大きく変わります。
②朝の対応で大切なポイント
朝、起き上がれないお子さんを見ると、つい焦ってしまいますよね。
ただ、無理に起こそうとしても、自律神経の調節がうまく働かない状態では起き上がるのが難しいのです。
起こすときは部屋を明るくして体内時計に光を届け、起き上がる前に少量の水を飲んでもらうとよいでしょう。
ベッドの上でゆっくり起き上がる時間をとり、立ち上がるときは頭を下げてゆっくり立つよう声をかけてあげてください。
③水分・塩分の摂取は最も基本的な治療
日本小児心身医学会のガイドラインでは、水分は1日1.5〜2リットル、塩分は普段の食事に+3g程度が目安とされています。
体内の循環血液量を増やすことで、立ち上がった時に脳への血流を保ちやすくなるのです。
味噌汁やスープ、塩分の入った飲料などを取り入れると、自然な形で水分と塩分を補給できます。
④毎日少しでも体を動かす習慣を
寝ている時間が長くなると、下半身の筋力が落ちて自律神経の働きも低下します。
体調のよい午後に、無理のない範囲で30分程度の歩行や軽い運動を続けることが、回復への近道とされています。
「学校に行く」ことを目的にせず、まずは外の空気を吸う程度から始めるのも一つの方法です。
⑤一人で抱え込まず、医療機関や学校と連携する
起立性調節障害は、家庭だけで解決しようとする病気ではありません。
主治医・学校の先生・スクールカウンセラーなど、複数の専門家と情報を共有することで、お子さんを支える体制が整います。
夜間や休日など、すぐに対面受診が難しいときには、小児科オンライン診療「あんよ」で医師に相談することも選択肢の一つですよ。
受診の目安と何科に行くべきか|セルフチェック付き
「これは病院に行ったほうがいいのかな?」と判断に迷うときは、まずセルフチェックをしてみてください。
日本小児心身医学会のガイドラインで示されている診断の手がかりをわかりやすく整理しました。
起立性調節障害のセルフチェック
3つ以上当てはまる、または2つでも症状が強いと感じる場合は、医療機関への相談を検討してみてください。
- 立ちくらみ・めまいを起こしやすい
- 立っていると気持ちが悪くなる、ひどいと倒れる
- 入浴時や嫌なことがあると気持ちが悪くなる
- 少し動くと動悸や息切れがする
- 朝なかなか起きられず午前中の調子が悪い
- 顔色が青白い
- 食欲が落ちている
- おへその周りが痛むことがある
- 倦怠感がある、疲れやすい
- 頭痛がある
- 乗り物に酔いやすい
受診の緊急度の目安
| 状況 | 受診のおすすめ |
|---|---|
| 失神を繰り返す・転倒してケガをした | すぐに受診 |
| 不登校が続く・学業や生活に大きな支障がある | 早めに受診 |
| 朝起きづらい状態が2週間以上続く | 早めに受診 |
| 立ちくらみがたまにある程度 | まずは生活習慣を整え、続くようなら受診 |
何科を受診すればよいか
起立性調節障害は、子どもの病気として小児科で診療されることが一般的です。
| 年齢 | 受診先の目安 |
|---|---|
| 小学生 | 小児科 |
| 中学生・高校生 | 小児科または思春期外来 |
| 心の問題が強そうな場合 | 児童精神科・心療内科 |
受診は午前中の症状が出やすい時間帯がおすすめです。
夜間や休日、通院が難しい時間帯に相談先を確保したいときは、小児科オンライン診療「あんよ」も選択肢の一つです。
起立性調節障害の回復までの目安|焦らず長期的に向き合う
「いつまで続くのだろう」と不安になるのは当然です。
日本小児心身医学会によると、回復までの期間は重症度によって大きく異なります。
| 重症度 | 回復の目安 |
|---|---|
| 軽症(日常生活への支障が少ない) | 適切な治療で2〜3ヶ月程度で改善が期待される |
| 中等症 | 数ヶ月〜1年程度で改善するケースが多い |
| 重症(長期欠席を伴うなど) | 社会復帰に2〜3年以上を要することがある |
時間がかかると感じるかもしれませんが、思春期を過ぎると症状が軽くなる傾向もあります。
済生会では「10代前半の好発年齢を過ぎると症状は軽減する」とも紹介されています。
親御さん自身のケアも忘れずに
長期的に向き合うからこそ、母親自身が健康でいることが何より大切です。
つい「私が頑張らなければ」と抱え込みがちですが、ストレスを溜めすぎると、お子さんを支えるためのエネルギーも保ちにくくなります。
- 信頼できる家族や友人に話を聞いてもらう
- 同じ悩みを持つ家族会・親の会に参加してみる
- 自分の好きな時間や休息をしっかり確保する
- 「ここまでできた」とご自分を認める
母親のせいではないからこそ、母親が一人で背負う必要もないのだと、ぜひ覚えておいてください。
起立性調節障害と母親のせいに関するよくある質問
- 母親が完璧主義だと、子どもの起立性調節障害が悪化しますか?
-
完璧主義そのものが起立性調節障害の原因になるという医学的な根拠はありません。
ただし、子どもが過度に気を張り続ける環境はストレスになりやすいため、「できなくても大丈夫」と伝える機会を増やすことが助けになる可能性があります。
- 起立性調節障害は遺伝しますか?
-
済生会の解説では、両親、特に母親の思春期前後に同様の症状があったケースが珍しくないとされ、体質的な要素が指摘されています。
ただし、これは「母親のせい」ではなく、誰にでも起こり得る体質の傾向と捉えるのが正確です。
- 学校を休ませることに罪悪感があります。どう考えればよいですか?
-
無理に登校させると症状が悪化することがあります。
同学会のガイドラインでも、学校と連携して受け入れ態勢を整えることが推奨されています。
午後だけ登校、週に数日だけ登校など、無理のないペースを学校と一緒に考えることから始めてみましょう。
- 夫や祖父母から「甘やかしすぎ」と言われます。どう説明すればよいですか?
-
学会のガイドラインや公的機関の情報を共有し、起立性調節障害が身体の病気であることを伝えるのが効果的です。
「怠けではなく自律神経の調節の問題」と医学的な根拠を持って説明することで、周囲の理解を少しずつ得られることがあります。
- 夜眠れないのは生活習慣のせいですか?
-
夜眠れないのも起立性調節障害の症状の一つで、自律神経のバランスの乱れが背景にあります。
午前中に光を浴びる、日中に体を動かすなどの工夫で生活リズムを整えていくのが基本ですが、改善しない場合は主治医に相談してください。
- 思春期を過ぎれば自然に治りますか?
-
多くのケースで思春期を過ぎると症状が軽減します。
ただし、重症例では成人期まで続くこともあるため、症状が長引く場合は継続的に医療機関と連携することが大切です。
【まとめ】起立性調節障害は母親のせいではない|病気の理解と医療連携が回復への近道
起立性調節障害は母親のせいではなく、自律神経の調節がうまく働かない身体の病気です。
家庭でできることは「母として完璧であろうとする」ことではなく、病気を正しく理解し、無理のない範囲でお子さんに寄り添うことです。
- 起立性調節障害は循環器系の自律神経の調節がうまく働かない身体の病気である
- 軽症例も含めて中学生の約10%にみられる身近な病気である
- 学会ガイドラインに「母親の養育態度が原因」とする記述はない
- 大切なのは怠けと誤解せず、病気として理解し医療と連携することである
- 水分・塩分・適度な運動・規則正しい生活が家庭でできる基本のケアになる
「自分のせいかもしれない」と背負ってきた重さを、少しおろしてみてもいいかもしれません。
お子さんを支える毎日のなかで、判断に迷うときや、夜間・休日で対面受診が難しいときは、小児科オンライン診療「あんよ」で医師に相談するのも選択肢の一つですよ。
最終的な治療方針については、必ずかかりつけ医や専門医に相談してください。

